このように「売り切れ御免」方式をとっている衣類専門店は珍しいです。そして一見すると、常に商品を切らさないようにしてこそ、お客の満足度が高まるようにも思われがちです。
ところが、ファッションセンターしまむらは、「売り切れ御免」の方式を一貫し、商品が売り切れても基本的に追加発注を一切しません。その理由について調べてみると、ファッションセンターしまむらは、この商品は「売り切れ御免」の方針を戦略的に貫いていると分かってきました。
ファッションセンターしまむらが商品の「売り切れ御免」を徹底する理由、それは主に3つあると考えられます。

理由@「売場の鮮度を保つことができる」
理由のひとつ目は、「売り切れ御免」にすることで「売り場の鮮度を保てる」ということが考えられます。「売り切れ御免」の方針を貫くことで、バイヤーは新しい商品をどんどん入荷することができる体制を確立できます。その結果、お客からすると、「しまむらに行ったらいつも新しい商品が入荷している」という状態になるのです。店舗内の売り場の配置は変わっていなくても、陳列されている商品が違っていたら、お客はその売り場に新鮮さを覚えるもの。結果的に、何度店舗に足を運んでも、鮮度の良い売り場で買い物を楽しめるということになるのです。買い物を飽きさせないことにより、ファッションセンターしまむらはうまくリピーターを獲得しているのです。
理由A「商品の種類を無数に増やすことができる」
ファッションセンターしまむらが「売り切れ御免」にこだわる2つめの理由として「商品の種類を無数に増やせる」というメリットが考えられます。1店舗につき同デザイン同サイズの商品1点のみに絞ることで、自ずと店舗には、限られた空間のなかに、数多くの商品を揃えることができるわけです。
ファッションセンターしまむらで買い物をする人はよく、しまむらでの買い物を「宝さがし」に例えます。それは、無数にある商品のなかから自分に合う商品を探し出す楽しみが、まるで宝探しをしているような感覚に浸れることを意味します。また、商品の種類が多いということは仮にお目当ての商品が売り切れていたとしても、似たような商品が見つかる可能性が高まることも意味します。
理由B「お客が他人と服装がかぶるリスクを回避できる」
3つめの理由は2つめの理由と関係しますが、ファッションセンターしまむらが「売り切れ御免」の方針をとることによって、お客は「他人とかぶる」リスクを回避することができるのではないでしょうか。全国1000店舗以上あるファッションセンターの店舗の多くは、どちらかというと地方の辺鄙な場所に位置しています。駅前の繁華街よりも、田舎の国道沿いを立地場所に選んでいるのです。そのように人口の多くない商圏においては、当然衣類店の数も少なく、「近所の人は皆しまむらで服を買っている」といった状況も少なくありません。そのような状況下で同じ商品を複数置いた場合、他人の服と被るケースが簡単に生まれてしまいます。
「他の人と同じ服を自分が着てても平気だわ」という人ももちろんいるでしょう。ただ、「他の人と服がかぶったら恥ずかしいなあ」と考える層も一定の割合で存在するわけです。たとえば、近所のママ友が自分と同じ服を着ていたら「あ、真似されてる」と思われ気まずくなってしまうリスクも想定されるわけです。
その点、1店舗につき、同商品同サイズは1点のみというファッションセンターしまむらで買い物をすれば、「他人とかぶる」心配がありません。つまり、「他人と服がかぶったら恥ずかしい」と心配になる層もうまく取り込むことができるわけなのです。
衣類専門店が商品の「売り切れ御免」の方針を徹底することには賛否両論あると思います。ただ、ファッションセンターしまむらの場合、店舗の立地条件などから、来店する客層の心理をうまくくみ取ってリピーターを増やすことにつなげていると考えられます。
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